生前整理で家族への思いやりを形に~大切なモノとの向き合い方~

今回は生前整理について解説いたします。60代女性が、自分に何かあったときに家族に迷惑をかけたくないと考え、生前整理を検討しています。自宅には多くの物があり、息子からはそれらがガラクタに見えると言われることもあります。生前整理ですべての物を捨てるべきか悩んでいます。

相談者からの質問

私は60代女性です。まだまだ元気なつもりではいますが、いつ何時何が起こるかわからない世の中です。私に万一があったときに、家族に迷惑をかけたくないと思うようになってきました。私の自宅にはモノがたくさんあり、息子から、母さんに愛着があっても僕にはガラクタにしか見えないと冗談半分で言われることもあります。最近生前整理をしましょうという言葉も聞きますが、こういうものを全部捨てるのがいいという事でしょうか。

回答

生前整理というのは、決まった定義はありません。最近は、相続税対策や遺言を書くことを含むと拡大解釈する業者も増えていますが、それは終活そのものであり、生前整理はもっと狭い概念です。

一般的には、終活の一内容であり、生きているうちに自分のモノや情報や生き方を整理しておくことです。具体的には、自分が何を持っているのかどんな契約をしているのかを整理して把握した上で、遺族が処分に困るものをあらかじめ処分しておくことです。少し前に「断捨離」という言葉が流行りましたが、断捨離と異なり、生前整理は、自分の死後を意識しながらより穏やかに生きるための活動です。

自分にとっては愛着があり価値のあるものでも他人にとっては価値を感じないということは、残念ながらよくあることです。貴方が亡くなった場合、財産的価値がなく、息子さんにとって主観的価値もないのであれば、息子さんが廃棄処分をすることになります。ただ、ものの量によってはその労力や費用はバカにならないわけです。自分の死後のことだから関係ない、と思う人もいますが、貴方のように、立つ鳥跡を濁さず、という考えを持つ人は少なくありません。そのような方々にとっては、自分で処分をしておくことが、遺族に対する思いやりと言えるでしょう。

もっとも、処分するかは自分で判断すべきです。愛着があって手放したくないものを無理やり処分する必要はありません。要は、心が平穏になる行動かどうか、です。不要なものを処分することで、心がスッキリしたり、部屋がきれいになったり、他人とのコミュニケーションが良くなったりすることがあります。そこに生前整理の意味があると思います。

なお、処分をする前提として、何を持っているか、の整理をする必要があります。これについては、エンディングノートを作成しておくことをお勧めします。モノについては見ればわかるかもしれませんが、データや情報や権利などは目に見えず、遺族にとってはモノを残されるよりも負担が重くなるからです。

まとめ

今回は生前整理について解説いたしました。生前整理の準備には、ぜひこのリビングノートをご活用ください。

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この記事を書いた人(堤)

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この記事を書いた人
弁護士
堤 悦朗
福岡県福岡市出身。上智大学外国語学部卒業。弁護士(2009年弁護士登録)。

大手法律事務所パートナーを経て2018年に独立開業。2019年MBA(九州大学)。本サービスの源流となるリーガルテックについて執筆した論文が南信子賞(最優秀賞)受賞

TVQ情報番組「ふくサテ」に終活の専門家として出演するなどメディア実績あり。

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