息子が死んだら嫁は同居を解消できるのか

息子さんがいるからこそ、嫁姑関係がうまく保たれている家庭も多いでしょう。もし、息子さんが突然亡くなってしまったら、一体どうなってしまうのでしょうか。

今回は、息子さんが亡くなった相談者さまが、嫁に同居を解消してほしいといわれた事例について解説していきたいと思います。

相談内容

私は80代の女性です。もともと私の夫名義の自宅を夫が亡くなったときに息子Aの名義に移しました。そしてA家族と一緒に暮らしていましたが、先日Aが亡くなりました。すると、Aの嫁Bが私に退去を求めてきました。確かに私とBの折り合いは悪かったのですが、私は今更行く所もないし、長年住み慣れたこの家に住み続けたいです。私は出ていかなければならないのでしょうか。なお、Aの遺言書はありません。

回答・解説

Aさん名義の不動産であれば、Aさんが亡くなった場合、Bさん(又はその子)がこの不動産を相続し、Bさんが所有者となります。

一方、Aさんと貴方との間には使用貸借契約が成立していると言えます。使用貸借というのは、無償で不動産や動産の貸し借りを行う契約です。そして、Aさんの使用貸借の貸主という地位をBさんは相続しているわけですから、貴方はBさんに対して借り主であることを主張できそうです。

しかし、この契約は以下①〜④のいずれかに該当する場合は終了します。ものの貸し借りという点では賃貸借契約と似ていますが、賃貸借契約と違って、使用貸借は無償で、それ故契約の拘束力が比較的弱い契約だからです

①契約期間が満了したとき

②使用収益の目的がある場合に、その目的が達成した場合

③使用収益の目的がある場合に、その目的が達成する相当期間が経過した時

④使用収益の期間も目的も定めていないときはいつでも解除されます。

 本件では、元々は夫であるAさんが建てた家であること、Bさんに名義移転した後もBさんが特に異議を述べていなかったこと、貴方が長年生活の本拠としていることからすると、貴方が「この家を生活の本拠として生活をする」ことが使用貸借契約の目的だと思われます。したがって、現時点では上記①〜④に該当しないようにも思えます。ただし、今後身体が弱り、老人ホームなどの施設が生活の本拠になった場合は、使用貸借契約は終了する可能性はあります。

 退去しなければいけない心配を減らしたいのであれば、効力の強い賃貸借契約をBさんと交わして、毎月賃料を払って住み続ける権利を取得するのがいいように思います。

0