債務の弁済に行き詰り、自己破産を考えている人の中には、その後親が亡くなってしまった場合、相続にどういった影響があるのかわからないという方も少なくないのではないでしょうか。
今回は、相談者さまからの相談内容をもとに、この問題について解説していきます。
なお、ケースによって対応方法はさまざまであるため、実際の上記のような状況に直面している場合は速やかに専門家に相談いただくことを推奨します。
相談内容
私は40代男性です。私は自己破産手続中なのですが、この度父が亡くなりそうな状況です。父の遺産は1000万円ほどですが、これを相続しても破産はできるのでしょうか。なお、他の相続人として弟が一人います。
回答・解説
自己破産手続中というのが具体的にどの段階かによります。
貴方のお父様が亡くなった時点で、裁判所から「破産手続開始決定」が出ている場合は、貴方は弟さんと遺産分割協議をすすめて、遺産を受け取ることができます。
一方、「破産手続開始決定」が出る前であれば、遺産を自由に受け取ることはできなくなります。
というのも、破産というのは、「破産手続が開始した時点」での債務者の財産を債権者に分配し、それ以上の部分については返済を免除するという手続だからです。
遺産も財産となりますので、破産手続きにおいて、破産管財人という人が登場して、貴方の代わりに弟さんと遺産分割協議をすることになります。通常は1000万円の半分の500万円を相続することになりますが、これの全部あるいはほとんどが債権者への分配に回されるでしょう。また、500万円がすべての債務をカバーするのであれば、そもそも破産をしなくていいという結論にもなりそうです。
それでは、破産も相続もできるためには、どうするのがいいのでしょうか。
一番いいのは、破産手続の申立てを急ぐことです。つまり、破産手続開始決定が早ければ早いほど、遺産を受け取れる可能性が高まるということです。
一方、もう既にお父様が亡くなったという場合、破産手続への影響を除外するためには、相続放棄をするのが一番スムーズです。これは「相続開始をしってから3ヶ月以内に家庭裁判所で」手続を行うものです。そうすれば、貴方の弟さんは取り分が増えることになります。