父が認知症になる前でも後見人をつけることができるのでしょうか?

今回は後見制度について詳しく解説いたします。

相談者からの質問

私は40代男性です。父は70代で隠居生活をしていますがまだまだしっかりしています。ただ、先日、父から私を後見人にしたいと言われました。後見人というのは、父が認知症などになってから弁護士さんがなるものだと思っていたのですが、父がしっかりしているうちに私が後見人になることが可能なのでしょうか。可能だとしてそれはどのような意義があるのでしょうか。

回答

高齢者が年を重ねるに従って認知症などで判断能力が衰えることは容易に想像できます。そのような場合に、彼ら/彼女らの財産など法的な権利を守るための制度が後見制度です。例えば、不動産の取引を行う場合、うまく判断ができず騙されて不当な契約書にハンコを押してしまい、財産を失ってしまうかもしれませんよね。そのような場合に、後見人がそのような取引を取り消すことできる、といったものです。

判断能力の程度によって、後見、保佐、補助という分類がありますが、今回は後見に絞ってお話をしますね。

後見と一口に言っても、実は2種類あります。「法定後見」と「任意後見」です。前者は、その名の通り「法律に基づいて定められる後見」です。後者は、任意に選ぶことのできる後見となります。どちらも、被後見人(=後見される人)を守るために存在するという点では共通しますが、以下の点で異なります。

法定後見は、常に判断能力が欠けている状態のときに、親族等が家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所が後見人を選ぶものです。そしてこの後見人が、本人の財産に関するあらゆる法律行為をサポートすることになります。後見人を誰にするかは、申立の理由や、親族らの意向や、本人との面談や、医師の診断書などによって総合的に判断されます。もちろん、子である貴方を後見人候補者とすることはできますが、必ずしも貴方が選ばれるとは限りません。弁護士や司法書士が選ばれることも多いです。

一方、任意後見は、本人の判断能力が十分なうちに、任意後見人になる人と契約を交わします。その後、実際に本人の判断能力が低下し(かつ任意後見監督人が選任された)ときに後見がスタートすることになります。任意後見人は、契約書で定めた行為について本人をサポートします。

まとめ

それぞれ一長一短がありますが、お父様からすると、事前に信頼できる人と任意後見契約をしておくとその後安心して生活できるという大きなメリットがあるでしょう。

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この記事を書いた人(堤)

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この記事を書いた人
弁護士
堤 悦朗
福岡県福岡市出身。上智大学外国語学部卒業。弁護士(2009年弁護士登録)。

大手法律事務所パートナーを経て2018年に独立開業。2019年MBA(九州大学)。本サービスの源流となるリーガルテックについて執筆した論文が南信子賞(最優秀賞)受賞

TVQ情報番組「ふくサテ」に終活の専門家として出演するなどメディア実績あり。

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