尊厳死と安楽死の違いについて

人生100年時代。私たちは、自分の人生においてどのように最期を迎えるかを考える機会を得ています。そのなかで、尊厳死と安楽死という言葉を耳にすることもあるでしょう。

尊厳死と安楽死、この2つの言葉は、人々が病気や老齢による苦痛や痛みから解放されるための選択肢を提供しています。しかし、この2つの概念には違いがあります。では、具体的に尊厳死と安楽死とは何か、どのような違いがあるのでしょうか?

本稿では、尊厳死と安楽死の違いについて相談者からの質問に回答する形で、この問題について解説していきます。尊厳死と安楽死の概念を正しく理解し、自身の価値観や希望に基づいた選択をするための一助となれば幸いです。

相談内容

私は、現在70代ですが、今後不治の病になった場合に、苦痛を伴った状態でずっと生かされることはよしとせず、延命措置をとらずに自然な状態であの世に行きたいと考えています。一方で、マスメディアでは、安楽死は犯罪だとか、尊厳死は認められないとか、いろいろな言葉が出てきており、自分がどうすればいいかよくわかりません。

回答・解説

尊厳死や安楽死といった言葉が明確に定義されてこなかったことや国内外の歴史的背景から、マスコミにおいても誤用されることがあり、それが混同の原因になっているように思われます。

尊厳死というのは、抽象的には人が人として尊厳を保った状態で死を迎えることを言いますので、これ自体はむしろ奨励されることだと思います。医学的な意味では、終末期における延命処置(人工呼吸器や胃ろう等)の差し控えまたは中止により苦痛を除去し、結果として間接的に死を迎えさせることを言います。法律上認められているわけではありませんが、ガイドラインがあり医療現場では一定の条件のもとに事実上容認された状態になっています。

安楽死というのは、苦痛から免れさせるために一定の条件のもと直接的に死期を早める措置をとることです。自己決定権を究極的に尊重するという考え方で、海外では合法化されている国もありますが、日本では全く認められておらず犯罪となります。

ですので、あなたが本当に延命措置をとらないで自然な状態で亡くなることを希望するのであれば、事前に「尊厳死宣言書」や「尊厳死宣言公正証書」を作成しておくことをおすすめします。

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