日本の法律や制度は高齢者をどのように支えているのでしょうか

日本では、高齢者の福祉と生活を支えるためにさまざまな法律や制度が整備されています。今回は、主な法律と制度の概要を解説いたします。

相談者からの質問

先日父が亡くなり、母が1人暮らしをしています。母は70代でまだまだ元気ではありますが、衰えは自覚しているようです。そんな母を見ていて、この国では高齢者はどのように守られているのだろうか、どんな法律、どんな制度があるのだろうかと思うようになりました。全体像を教えて下さい。

回答

高齢者とは、世界保健機関(WHO)の定義によれば、65歳以上の人のことを言います。74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と言います。高齢になればなるほど認知的・肉体的に衰えることから、高齢者を守っていく必要があります。また、日本の高齢者割合は年々増加しており、2020年9月時点で28.7%となりました。もはや個別の配慮で対処するのは困難であり、高齢者を保護していく仕組み作りが必然となっています。

高齢者に関わる法律は、民法を始めたくさんありますが、今回は、高齢者保護に特化した法律について説明してみたいと思います。高齢者保護と一口に言っても様々な切り口が考えられますので、以下のように分類するとわかりやすいかと思います。

【 1福祉 /2医療 /3保険 /4移動 /5雇用 /6居住 】です。

1 福祉について

まず、老人福祉法があります。高齢者に対する全般的な社会保障の原理を定める法律です。高齢者施設についてのルールも定めています。

また、福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律によって、高齢者の自立の促進や介護者の負担軽減を促進しています。

さらに、高齢者虐待防止法によって、高齢者への虐待を阻止する方策を進めています。

2 医療について

高齢者の医療の確保に関する法律というものがあります。これは、後期高齢者の医療制度の充実化や費用負担の調整や特定の健康診査等の実施などを講ずることで、高齢者への適切な医療の確保を図るものです。

3 介護について

介護保険法により、介護保険制度を定め、介護従事者等の人材を確保し、要介護者に対して適切な保健医療サービスを提供する仕組みを作っています。

4 移動について】 

バリアフリー法(正式:高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)により、高齢者が肉体的・精神的に負担なく移動できるよう、街や建物のバリアフリー化を促進しています。

【5 雇用について

高年齢者雇用安定法により、定年引き上げや継続雇用制度の導入等により、就業の意欲や能力のある高齢者への安定した就業機会の確保を図っています

6 住まいについて】 

高齢者すまい法(正式:高齢者の居住の安定確保に関する法律)により、高齢者が安心して生活できる居住環境の整備を図っています。サービス付き高齢者向け住宅事業(=サ高住)はこの法律によって創設されました。

まとめ

以上の高齢者を守る法律は、尊厳と自立を支える重要な基盤です。安心して暮らせる社会を作るには、法律をうまく運用することが重要です。

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この記事を書いた人(堤)

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この記事を書いた人
弁護士
堤 悦朗
福岡県福岡市出身。上智大学外国語学部卒業。弁護士(2009年弁護士登録)。

大手法律事務所パートナーを経て2018年に独立開業。2019年MBA(九州大学)。本サービスの源流となるリーガルテックについて執筆した論文が南信子賞(最優秀賞)受賞

TVQ情報番組「ふくサテ」に終活の専門家として出演するなどメディア実績あり。

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