老人ホーム倒産時の入居者への影響と対策

老人ホームが倒産した場合、入居者やその家族は多くの不安を抱えることになります。今回は、老人ホーム倒産時の影響と考えられる対策について解説いたします。

相談者からの質問

私の母は現在老人ホームに入所しています。私もたまに母に会いに行くのですが、最近ここの職員さんの退職が続いているように思います。また、新しい入所者がいないようです。経営がうまくいっていないという噂も耳にしますが、もしこの老人ホームが倒産したら、私の母はどうなるのでしょうか。

せっかく入所した施設から退去しないといけないのでしょうか、そうすると支払い済みの入居一時金はどうなるのでしょうか。とても心配です。

回答

2020年の「老人福祉・介護事業」の倒産件数は118件となり、過去最多を更新しました。負債総額が1億円未満が79.6%、従業員5人未満が66.9%、設立10年未満が55%を占めており、設立から日が浅い小規模の事業者が倒産しやすいことがわかります。新型コロナ特有の影響もあったとは思いますが、介護事業者の倒産は珍しいことではなくなっています。

それでは貴方のお母様が入所されている老人ホームが倒産してしまった場合、お母様は強制的に退去させられることになるのでしょうか。

事業者が倒産する場合、当然入所者の利益を考えなければならず、そうでなければ裁判所が倒産を許すことはありません。ですので、通常は、他の事業者が事業譲渡を受け、運営を引き継ぐことになります。

その場合、経営母体が変わるだけですので、職員さんが解雇されたり、施設を移動したりすることはあまりありません。ただし、事業譲渡を受けた会社のサービスが適用されることになりますので、従来無料だったサービスが有料になったりすることはあり得ます。

一方、少数ではありますが、当該施設の運営の引き継ぎ先が見つからないまま倒産した場合はどうなるのでしょうか。その場合は、入所者さんやその家族は自力で次の居住先を見つけなければいけないことになります。また支払い済みの入居一時金は、倒産した企業からの返還は期待できませんが、銀行や損害保険会社等が500万円を上限として返還をする保全措置や、500万円の補償金が公益社団法人有料老人ホーム協会から支払われる入居者生活保証制度がありますので、全く返還されないということはないと思います。

まとめ

いずれにせよ、今や老人ホームの倒産リスクは現実的な問題です。入所する際には、信頼性の高い事業者を選び、一時入居金の保証制度について事前に確認することが重要だといえそうです。

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この記事を書いた人(堤)

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この記事を書いた人
弁護士
堤 悦朗
福岡県福岡市出身。上智大学外国語学部卒業。弁護士(2009年弁護士登録)。

大手法律事務所パートナーを経て2018年に独立開業。2019年MBA(九州大学)。本サービスの源流となるリーガルテックについて執筆した論文が南信子賞(最優秀賞)受賞

TVQ情報番組「ふくサテ」に終活の専門家として出演するなどメディア実績あり。

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