遺産分割協議書の署名捺印を集めるのが難しいです

今回は、遺産分割協議書の署名捺印を集める際の効率的な方法を解説いたします。

相談者からの質問

私は40代女性です。先日父が亡くなったのですが、遺言書はなかったので、遺産分割協議をしなければいけません。母は施設に入院しており、頭ははっきりしていますが手が動きにくいです。兄は遠方に住んでいてなかなか連絡がとれにくいです。相続人は全部で5人います。できるだけ急ぎたいのですが、どういうやり方で署名捺印を集めるのがいいのでしょうか。

回答

弁護士に一任するのが一番ラクですしスムーズだとは思いますが、費用をかけないように自分で対応する場合について以下説明します。

まず、遺産分割案を書いた書面を作成して、相続人全員に送りましょう。そして、電話でよいので異議があるかどうかを確認しましょう。異議がある人がいればどの点に異議があるのか、どういう内容だったらよいのかについて聞き取りましょう。そして相続人全員で協議内容を詰めていきましょう。全員が異議のない状態になったら、正式な遺産分割協議書を作成して全員に郵送しましょう。1枚の協議書に5人全員が連署するものを5部作成するというのが一番間違いのない形です。相続人全員が原本を保有するためです。

ただ、兄が遠方に住んでいる場合に兄の署名を待ってから行動するのは時間がもったいないようにも思いますよね。そういう場合には、遺産分割証明書というもので代用します。これは連署ではなく、5人それぞれが1人ずつ署名捺印するものです。これであれば同時並行で署名を集めることができます。全員分集めれば連署した遺産分割協議書と同じ効果を持つことになります。

お母様についても意思表示がわかればよく、貴女の目の前で自署しなければいけないわけではありませんので、施設の方を介して署名捺印してもらいましょう。

お母様が手が動きにくいとのことですが、遺産分割協議書は当事者の協議の結果をまとめたものなので、遺言書のような厳しい自署性は求められていません。

なので、例えば貴女が代筆するということは可能ですし、署名ではなく記名という形でも有効は有効です。ただ、相続人間の関係性によっては、後日無効だと争われる可能性がないではないし、銀行から自署を求められる可能性もあります。ですので、できることであれば、自署がいいわけです。手が動かないという程度にもよりますが、可能な限りお母様に自署してもらうのがいいと思います。いずれにせよ、そのような状況を録画しておいたり、事情や経緯を遺産分割協議書に記入していくとなおよいでしょう。

まとめ

遺産分割協議書を作成する際に遠く離れた場所に住む相続人や、施設に入居している親族がいる場合の具体的な対応策を説明しました。遺産分割協議を円滑に進めたい場合は、ぜひ参考にしてください。

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この記事を書いた人(堤)

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この記事を書いた人
弁護士
堤 悦朗
福岡県福岡市出身。上智大学外国語学部卒業。弁護士(2009年弁護士登録)。

大手法律事務所パートナーを経て2018年に独立開業。2019年MBA(九州大学)。本サービスの源流となるリーガルテックについて執筆した論文が南信子賞(最優秀賞)受賞

TVQ情報番組「ふくサテ」に終活の専門家として出演するなどメディア実績あり。

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