【遺言書通りなら取り分ゼロ】遺留分侵害額請求とは?

遺言書は、遺産分割において非常に重要な役割を果たします。しかし、時には遺言書に記載された遺留分の取り分が、家族や相続人によって異議を唱えられることがあります。

特に、親の遺言書によると、財産の相続額に兄弟で偏りがあるという場合や、兄弟のうち一人の取り分がゼロといった場合、トラブルに発展する可能性があります。

今回は、相談者さまからの質問に回答する形でこの問題について解説していきたいと思います。

相談内容

私は50代です。父はもう亡くなっており、この度母が亡くなりました。兄が一人います。兄から母の遺言書があるということで見せてもらったのですが、そこには兄がすべての財産を相続すると書いてありました。兄からは申し訳程度に100万円を受け取りました。確かに兄が母の面倒を見ていたのは事実ですが、遺産の中には不動産が何軒もあるのですから、私の取り分がゼロというのはおかしいと思います。

回答・解説

遺言で書かれてあることは最大限尊重されるのですが、相続人の取り分については法律上一定の保護がなされています。それが遺留分という制度です。

遺留分とは、民法で定められた、法律上認められる相続財産の相続割合のことです。具体的には、「法定相続分×遺留分割合」で算出されます。

あなたのケースの場合は、法定相続分が2分の1であり、遺留分割合も2分の1となりますので、4分の1があなたの遺留分ということになります。

つまり、遺言書ではあなたの取り分がゼロとなっていても、実際には最低でも4分の1はあなたの取り分として認められるということです。おそらく100万円を大きく超える金額になると思います。

ですので、あなたはお兄さんに対して「遺留分侵害額請求」という請求をして、相続財産の4分の1に相当する金銭を請求することができます。なお、この請求は、相続開始又は遺留分を侵害する遺贈を知ったときから1年以内にしないといけないので注意が必要です。

不動産が多いということですので、これを金銭に評価して、お金を受け取るのが原則となりますので、不動産の評価で争いになる可能性はあります。これについては、不動産の査定をとって双方で協議することになりますし、協議が整わない場合は、調停や訴訟で決着することになるでしょう。

また、お兄さんからすれば、あなたに支払う現金を用意できないということもありえます。その場合には、相続した不動産を売却したり、この不動産を抵当に入れて銀行から融資を受けたりしないといけないので、解決に時間がかかることもあります。

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