家族や遺族にとって、あまり知られていな「死亡退職金」。もちろん、死亡退職金制度を導入している企業もあれば、そうでない企業もありますので、一概に皆さんに影響が及ぶ問題ではないかもしれませんが、終活を実施する上で、自分自身の会社制度に「死亡退職金制度」が設けられていた場合、もしもの事態に備えて家族にその制度について解説しておく方がよいでしょう。
本記事では、相談者さまからの質問に回答する形で、死亡退職金とは何か、そして誰が「死亡退職金」を受け取る権利を持つのかについて解説していきます。
相談内容
先日、夫が亡くなりました。私達に子供はおりませんので、相続人は妻である私と夫の兄Aとなります。夫は、ある法人の取締役を務めており、死亡退職金4000万円が私に支払われることになりました。これに対して、Aが、自分には相続分が4分の1あるのだから、1000万円を渡してほしいと言ってきました。私はAに1000万円渡すべきなのでしょうか。
回答・解説
「死亡退職金」というのは、在職中に死亡した従業員等のために支給される退職金のことです。
この死亡退職金が、死亡した従業員等の相続財産だとすれば、相続分に従って相続人に分配しないといけないので、本件では1000万円をAに渡さないといけないことになります。
しかし、通例、死亡退職金は通常の退職金とは異なり、死亡した従業員等が受け取るものではなく、就業規則や退職金規定などで受給権者が決まっているのが通常です。一般的には、妻や子が支給対象になると思います。つまり、死亡退職金は相続財産ではない場合がほとんどなのです。
あなたの夫の職場にもそのような規定があると思いますので問い合わせをするとよいと思います。そして受給権者がAでない限りは、あなたはAに1円も渡す必要はありません。
ちなみに、職場にそのような規定がなかった場合ですが、その場合でも、相続とは無関係に妻個人に支給されたものとするという結論は大いにありえます。