「土地と建物の名義が違う場合」は、不動産取引や相続においてよく起こる問題の一つです。しばしば、土地と建物の所有者が異なるケースがあります。このような状況では、名義変更手続きや相続問題が生じる可能性があります。
本コラムでは、相談者からの質問に回答する形で、この問題について解説していきます。土地と建物の名義が異なる場合には、どのような事態が生じるのか、そしてその対処方法について考えてみましょう。
相談内容
私は70代男性です。私はここ40年くらい今の家で暮らしています。この家は私の名義です。この家を息子に相続させようと思っているのですが、実はこの家が建っている土地は、私の名義ではなくAさんの名義なのです。Aさんはもう亡くなっています。私は40年前にこの土地をAさんからもらったのですが特に証拠はありません。この土地を私の名義にして、息子に相続させることは可能なのでしょうか。なお、土地の固定資産税は私が払っています。
回答・解説
つまり、土地はAさん名義で、建物はあなた名義ということですね。建物だけ息子さんに相続させることは可能ですが、土地が他人名義だと色々と面倒なことになりそうです。一番考えられるのは、売却など処分しようと思っても処分できないということです。
ですので、土地と建物の名義を一致させた方がいいのは明らかです。
本件の場合、贈与を受けたとのことですが証明ができないのでその点は諦めたほうが良さそうです。
考えられるのは、土地の時効取得です。時効取得というのは、「所有の意思をもって」「平穏かつ公然と」「他人の物を」一定期間(10年または20年)占有した場合、その他人の物を自分のものとできるという制度です。
本件では込み入った事情があるようなので具体的にお話を伺う必要がありますが、40年も自分の家を建てて住み続けており、土地の固定資産税も払っている事情を考えると、時効取得ができる可能性があります。
ただ、時効取得したと宣言するだけで土地の所有名義が自動的にAさんからあなたに移転するわけではありません。土地の所有権登記の移転のためには、Aさんの相続人全員の協力が必要となります。そのため、Aさんの相続人を探し出して、連絡して、協力をしてもらう必要があります。仮に、相続人のうちの一人から異議が出て協力してもらえない場合は、最終的には裁判で決着しないといけないということになります。