今回は節税に関するご質問をいただきました。不動産の路線価と実勢価格の差を利用した節税について、弁護士が解説いたします。
相談者からの質問
私は70代男性です。運良く事業に成功したこともあり、多額の預貯金をもっています。これを子どもたちに遺したいのですが、相当な相続税が課されると聞き節税方法を考えています。最近、路線価と実勢価格の差を利用して節税をするのがいいという話を聞きましたが、具体的にどういうことなのか、そしてそれは許されることなのか、教えて下さい。
回答
例えば貴方が10億円の預貯金を保有していたとします。日本は超過累進課税(金額が多いほど税率が上がる仕組み)を採用しており、今回のケースでは、ざっと半分くらいは税金としてもっていかれることになり、節税を検討するのは当然かと思います。
10億円を預貯金として遺す必要性が高くないのであれば、これを何か別の資産に替えることが有効な節税となります。例えば、不動産の購入です。不動産は、路線価が実勢価格(時価)よりも低いのが通常なので、この差を利用するということです。路線価とは、国税局長が発表する、相続財産である土地の価格を計算するもとになる価格のことです。
例えば、10億円のマンション1棟を購入します。つまり、貴方は10億円の預貯金を10億円の価値のあるマンションに替えました。そうすると相続財産としては7億円と評価されたりするわけです。そうすると、10億円を預貯金で保有しておくよりも相続税をだいぶ抑えることができます。なお、預貯金が1億円くらいであれば上記方法による節税効果は薄いと思われます。
それではこのような節税は許されるのでしょうか。一般的には許されますが、国税局は「(路線価方式を採用することが)著しく不当と認められる財産は国税庁長官の指示を受けて評価する」という例外規定を使って独自に不動産価値を算出することができます。そうすると追徴課税されてしまう可能性があります。路線価と購入額がかけ離れているかどうかがポイントになりそうですね。
具体的には税理士さんに相談しましょう。
実際に、類似の内容で、最高裁判所で争われた事件がありますので、また別の機会で解説したいと思います。